本記事は、2026年10月30日時点で公開されている資料をもとにした一般的な観点の整理です。法令の解釈や、個別のサービスの判断は、各自治体の個人情報保護の所管部門と、システムを提供する事業者、必要に応じて専門家に確認してください。ガイドラインや Q&A は改訂が続き、令和8年の改正法の施行に伴って条番号が変わる可能性もあるため、実際の作業の時点で最新の版を確認してください。
自治体と民間事業者で、同意の位置づけが違う
令和3年の個人情報保護法の改正(令和5年4月に全面施行)で、個人情報保護委員会が、民間部門に加えて公的部門も一元的に監視監督する体制になりました。地方公共団体の機関(議会を除く)は、同法の「行政機関等」に含まれます。個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(行政機関等編)」(令和8年10月一部改正)には、次の原則が示されています。
- 保有の制限 — 行政機関等は、法令の定めに従い適法に行う事務又は業務を遂行するため必要な場合に限り、個人情報を保有できる。地方公共団体では、地方自治法の「地域における事務」も含まれ、ここでの法令には条例が含まれる
- 利用目的の特定 — 個人情報がどのような事務又は業務に使われるかを、できるだけ具体的かつ個別的に特定する。変更は、変更前の目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲まで
- 利用目的の明示 — 本人から書面(電磁的記録を含む)で直接取得するときは、あらかじめ本人に利用目的を明示する
- 目的外の利用・提供 — 例外として認められる場合の 1 つが「本人の同意があるとき」。ただし、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあるときは、できない
個人情報保護委員会の Q&A(行政機関等編、令和8年4月更新)は、さらに次の点を示しています。
- 目的外の利用・提供の例外の規定は、臨時的に行う場合のもの。恒常的に行う場合は、利用目的の範囲内で行う必要がある
- 地方公共団体の機関には、一部の業務を除き、民間事業者向けのオプトアウト(本人が拒まない限り提供できる仕組み)による第三者提供の規定は適用されない
また、病院の運営など一部の業務では、地方公共団体の機関でも民間事業者向けの規律が適用されます。サービスの内容によって、適用される規律が異なることがある点にも注意します。
自治体が設計で決める 7 つのこと
同意管理は、次の流れで考えると整理しやすくなります。住民向けサービスの同意の設計について、行政機関等に直接当てはまる基準は見当たらないため、以下の表は本記事による整理です。
表は横にスクロールできます
| # | 決めること | 選択肢の例 | 仕様書・運用に書くこと |
|---|---|---|---|
| 1 | 何に同意を求めるか | サービスの利用規約/個人情報の取扱いの説明(利用目的の明示)/連携先への情報提供 | 同意を求める文書と、同意ではなく「明示」で足りる事項の区別 |
| 2 | 利用目的の示し方 | 入力画面に表示する/送信ボタンの近くにリンクを置く | 送信の前に住民の目に留まる配置 |
| 3 | 同意の取り方 | 確認欄へのチェック/ボタンのクリック/項目ごとに選べるようにする | 同意の対象と単位(文書ごと、連携先ごと、項目ごと) |
| 4 | 子どもの同意 | 法定代理人の同意を求める/一定の年齢から本人の同意も求める | 年齢の考え方と、保護者の同意の確認方法 |
| 5 | 同意の記録 | 同意した日時・文書の版・同意した人を記録する | 記録する項目、保存期間、照会への対応 |
| 6 | 改定時の扱い | 周知だけにする/ログイン時に再同意を求める | 再同意を求める改定の基準、周知の方法と時期 |
| 7 | 撤回と退会 | 同意の撤回を受け付ける/撤回したら利用を止める | 撤回の方法、撤回後に止める処理、退会時の扱い |
特に判断が分かれる 5 点を、順に見ます。
何に同意を求めるか
自治体のサービスでは、「規約に同意する」ことと「個人情報の利用目的を知らせる」ことを、分けて考えます。利用目的の明示は、法令が定める行政機関等の義務で、住民の同意によって成り立つものではありません。一方、サービスの利用条件(禁止事項、サービスの停止、免責など)や、法令で同意が必要とされる場面(目的外の利用・提供を本人の同意で行う場合など)では、同意を求めます。同意の画面に何でもまとめると、何に同意したのかが住民にも職員にも分かりにくくなります。
利用目的の示し方と、同意の取り方
個人情報保護委員会の事務対応ガイド(行政機関等向け、令和8年10月一部改正)は、オンラインで取得する場合も利用目的の明示の対象になるとし、ホームページにあらかじめ掲載しておく場合でも、本人が送信ボタン等をクリックする前に、利用目的が本人の目に留まるよう配置に留意することが望ましいとしています。また、同じ資料は、本人の同意は必ずしも書面によることを要しないこと、同意が強制されたものである場合などは権利利益を不当に侵害するおそれがあるとしています。
同意の取り方の具体例は、民間事業者向けの「ガイドライン(通則編)」(令和8年6月一部改正)が参考になります。同意する旨の確認欄へのチェックや、ホームページ上のボタンのクリックなどが、同意を得る方法の例として挙がっています。ただし、通則編は民間事業者向けの資料であり、自治体の通常の事務には直接適用されません。
国の仕組みでの実例として、デジタル庁・総務省の「公的個人認証サービス利用のための民間事業者向けガイドライン」(第 1.8 版、令和8年4月改正)は、最新の基本 4 情報を提供するサービスについて、次のように同意を設計しています。
- 同意は電子的に取得し、紙での取得は認めない。同意の取得単位は、サービスごととする
- 利用者は、基本 4 情報の各項目に対し、同意するか否かを選択できる
- 同意の有効期間は、同意を受け付けた翌日を起算日として 10 年
これは特定のサービスについての定めで、自治体のサービス一般の基準ではありませんが、同意の単位・項目・期間を最初に決めておくという点で参考になります。
同意の記録
行政機関等の住民向けサービスについて、「いつ・誰が・どの版に同意したか」の記録を求める公的な規定は、本記事で確認した資料の範囲では見当たりませんでした。関連する記述としては、民間事業者向けの「ガイドライン(第三者提供時の確認・記録義務編)」が、本人の同意に基づく第三者提供では同意を得ている旨を記録するとし、システムの設定により本人の同意を得た場合のみ提供される仕組みになっていれば、同意の存在を示す証跡とできるとしています。
法令上の義務とは別に、規約を改定したときや、住民から問い合わせがあったときに確かめられるよう、同意した日時、同意した文書と版、同意した人を記録しておくと、運用で困りません(本記事の整理)。記録の保存期間と、住民からの照会にどう応えるかも、あわせて決めておきます。
改定時の扱い|周知と再同意
民法には、民間の取引で使う「定型約款」を変更するときのルールがあります(第548条の4)。変更が相手方の一般の利益に適合するとき、または契約の目的に反せず、変更の必要性や変更後の内容の相当性などに照らして合理的なときは、個別に合意しなくても変更でき、効力発生時期を定めて、変更の内容と効力発生時期をインターネットなどの適切な方法で周知する、とされています。法務省のパンフレットは、「当社都合で変更することがあります」と書いてあっても、一方的に変更できるわけではないと説明しています。
自治体の住民向けサービスの利用規約に、この定型約款の規定が適用されるかを直接述べた公的資料は、本記事で確認した範囲では見当たりませんでした。サービスの法的な性質によって異なるため、個別に確認が必要です。
国の機関の実例として、デジタル庁の「マイナアプリ・デジタル認証サービス・マイナポータル利用規約」は、利用者の一般の利益に適合するとき、または合理的なときに規約を変更できるとし、緊急の場合を除き、効力発生日の 7 日前までに変更の内容と効力発生時期を通知すると定めています。また、法令上、利用者の同意が必要となるような内容の変更の場合は、所定の方法で同意を得るとしています。
自治体のサービスでも、どの改定は周知で足り、どの改定で再同意を求めるかの基準と、周知の方法・時期を、最初に決めておきます。個人情報の利用目的を変える場合は、同意の有無とは別に、変更前の目的と相当の関連性がある範囲かどうかを確認します。
子どもの同意
事務対応ガイドは、本人が未成年者等で判断能力が十分でない場合は、親権者や法定代理人等から同意を得る必要があるとしています。年齢の目安について、個人情報保護委員会の Q&A(民間事業者向け)は、個別に判断されるべきとしたうえで、一般的には 12 歳から 15 歳までの年齢以下の子どもについて、法定代理人等の同意が必要と考えられるとしています。令和8年の改正法(令和8年法律第56号)では、16 歳未満の人について法定代理人の関与を求める方向の改正が行われ、個人情報保護委員会の資料では、行政機関等についても同様の改正を行うとされています。施行日と細目は政令・規則で定められるため、設計の時点で確認してください。保護者のアカウントに子どもを紐付ける場合の考え方は、「子育て手続きの親子アカウント紐付け」で整理しています。
撤回と退会
同意を取るなら、撤回の方法も用意します。撤回を受け付けたときに、どの処理を止めるのか(連携先への提供、通知の配信など)、撤回の前に提供した情報をどう扱うのかを決め、住民向けの案内に書いておきます。退会のときに、同意の記録をいつまで残すかも決めておく必要があります(本記事の整理)。
調達の全体像は、「自治体の認証基盤 調達チェックリスト」にまとめています。操作ログ、可用性、契約終了時の扱いなど、本記事で扱わなかった観点はそちらを参照してください。住民向けの ID 連携で連携先に情報を渡す考え方は、「自治体の OpenID Connect による SSO 入門」で整理しています。
RinX の場合
当社の自治体向け統合 ID 基盤 RinX(リンクス)には、同意管理の機能があります。サービスページで公開している内容は次のとおりです。
- 同意の管理 — 個人情報の利用目的に対する同意を管理できます
- 同意文書の管理 — 利用規約などの同意文書を管理し、改定時の再同意の取得に対応しています。規約の改定時は、利用者に再同意を求める画面が自動で表示されます
- 本人確認の手段 — マイナンバーカードによる本人確認(公的個人認証)、LINE、メールアドレスのログインに対応しています。利用する手段は、自治体ごとにご相談のうえ決定します
- 家族・連携 — お子さまのアカウントの紐付けと、OpenID Connect によるシングルサインオンに対応しています
上の 7 点に沿った個別の要件(同意を求める文書、再同意を求める改定の基準、記録の扱いなど)は、お問い合わせの際にご相談ください。RinX に関する記事は、RinX の記事一覧にまとめています。
まとめ
- 行政機関等が利用目的のために個人情報を利用・提供するとき、本人の同意は求められていない。同意は、目的外の利用・提供の例外の 1 つとして出てくる
- 恒常的な利用・提供は、利用規約への包括的な同意ではなく、利用目的の範囲で整理する。オプトアウト型の提供は、地方公共団体の機関には原則として適用されない
- 「規約への同意」と「利用目的の明示」を分け、利用目的は送信の前に目に留まるよう示す
- 同意の記録を求める公的な規定は見当たらないが、改定や問い合わせに備えて、日時・文書の版・同意した人を記録しておく
- どの改定で再同意を求めるか、子どもの同意、撤回の方法を、運用を始める前に決めておく
RinX の機能・導入の流れ・費用の考え方は、サービスページで確認できます。
よくある質問
Q1. 自治体のサービスでは、個人情報の利用に住民の同意が必要ですか?
行政機関等が、法令に基づく事務のために特定した利用目的の範囲で個人情報を利用・提供する場合は、本人の同意を得ることは求められていません。同意は、目的外の利用・提供が例外的に認められる場合の 1 つです。ただし、病院の運営など一部の業務では民間事業者向けの規律が適用されるなど、サービスによって異なるため、所管部門に確認してください。
Q2. 利用規約に同意してもらえば、連携先へ情報を提供できますか?
同意があっても、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあるときは、目的外の提供はできません。また、個人情報保護委員会の Q&A は、恒常的に行う利用・提供は、例外の規定ではなく、利用目的の範囲内で行う必要があるとしています。包括的な同意で済ませず、利用目的の設定から整理します。
Q3. 同意は、チェックボックスで取ってよいですか?
事務対応ガイドは、本人の同意は必ずしも書面によることを要しないとしています。民間事業者向けの通則編では、同意する旨の確認欄へのチェックや、ボタンのクリックが、同意を得る方法の例として挙がっています。何に同意するのかが分かるよう、同意の対象を画面で明確に示すことが大切です。
Q4. 同意の記録は、法律で義務付けられていますか?
行政機関等の住民向けサービスについて、同意の記録を求める公的な規定は、本記事で確認した資料の範囲では見当たりませんでした。民間事業者の第三者提供では、同意を得ている旨の記録が求められています。改定や問い合わせに備え、同意した日時、文書の版、同意した人を記録しておくことをおすすめします。
Q5. 規約を改定したら、必ず再同意が必要ですか?
一律に決まっているわけではありません。民間の定型約款では、一般の利益に適合する変更や、合理的な変更は、周知のうえで個別の合意なく行えるとされています。自治体の規約に定型約款の規定が適用されるかは、サービスの性質によって個別に確認が必要です。どの改定で再同意を求めるかの基準を、最初に決めておきます。
Q6. 子どもの同意は、どう扱いますか?
判断能力が十分でない未成年者等については、親権者や法定代理人等から同意を得る必要があります。年齢の目安は、個人情報保護委員会の Q&A(民間事業者向け)で、一般的に 12 歳から 15 歳までの年齢以下とされています。令和8年の改正法では 16 歳未満を対象とする方向の改正が行われていますが、施行日と細目は政令・規則で定められるため、設計の時点で確認してください。
Q7. RinX では、規約の再同意を管理できますか?
サービスページでは、利用規約などの同意文書の管理と、改定時の再同意の取得に対応していることを公開しています。規約の改定時は、利用者に再同意を求める画面が自動で表示されます。再同意を求める改定の基準や、記録の扱いなどの個別の要件は、お問い合わせの際にご相談ください。
出典・参考資料
いずれも2026年10月30日に内容を確認しています。
- 個人情報保護委員会『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(行政機関等編)』(令和4年1月、令和8年10月一部改正)ppc.go.jp
- 個人情報保護委員会事務局『個人情報の保護に関する法律についての事務対応ガイド(行政機関等向け)』(令和4年2月、令和8年10月一部改正)ppc.go.jp
- 個人情報保護委員会『個人情報の保護に関する法律についてのQ&A(行政機関等編)』(令和4年2月、令和8年4月更新)ppc.go.jp
- 個人情報保護委員会『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)』(平成28年11月、令和8年6月一部改正)ppc.go.jp
- 個人情報保護委員会『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(第三者提供時の確認・記録義務編)』ppc.go.jp
- 個人情報保護委員会『「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A』Q1-62ppc.go.jp
- 個人情報保護委員会事務局『個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律 政令・規則の整備に向けた基本的な考え方について①』(令和8年9月16日)ppc.go.jp
- e-Gov 法令検索『民法』(明治29年法律第89号)第548条の2〜第548条の4laws.e-gov.go.jp
- 法務省民事局参事官室『2020年4月1日から 売買、消費貸借、定型約款などの契約に関する民法のルールが変わります』moj.go.jp
- デジタル庁『マイナアプリ・デジタル認証サービス・マイナポータル利用規約』services.digital.go.jp
- デジタル庁・総務省『公的個人認証サービス利用のための民間事業者向けガイドライン -第1.8版-』(平成27年9月、令和8年4月改正)soumu.go.jp
関連サービス
RinX(リンクス)
本人確認・マイページ・外部連携をひとつの基盤で提供する、自治体向けの統合 ID 基盤です。


