本記事は、2026年10月30日時点で公開されている資料をもとにした一般的な観点の整理です。個別の手続きの要件や、個人情報の取扱いの判断は、各自治体の所管部門と、システムを提供する事業者、必要に応じて専門家に確認してください。引用した資料は改訂が続くため、実際の作業の時点で最新の内容を確認してください。
なぜ紐付けの設計が必要か
デジタル庁は、「特に国民の利便性の向上に資する行政手続」のうち、子育て・介護関係の 26 手続について、自治体のオンライン化の取組状況を公開しています(自治体での子育て・介護関係の26手続のオンライン化取組状況)。子育て関係の手続きは、児童手当や保育所の利用のように、申請者が保護者で、対象が子どもになるものが多くあります。
このとき、システムには次の 3 つの問いが生まれます。
- この人は本人か — 申請する保護者の本人確認
- この子どもの保護者か — 保護者と子どもの関係の確認
- この手続きを代わりに行ってよいか — 手続きごとの権限
1 つ目は、マイナンバーカードによる本人確認(公的個人認証)などで確かめられます。難しいのは 2 つ目と 3 つ目で、ここを「同じ世帯にいるから」で一律に済ませると、離婚・別居・DV など、家族の状況が変わる場面で問題が起きます。
国の仕組みで見る|マイナポータルの代理人設定
参考になるのが、マイナポータルの代理人設定です。デジタル庁の操作マニュアルとよくある質問には、次の記載があります。
- 代理人設定では、委任する人が、代理人に許可するサービスや、参照を許可する情報、代理できる期間などを設定し、代理人または委任する人のマイナンバーカードを読み込ませて登録する
- マイナンバーカードを持っていれば、誰でも代理人になることができる。ただし、パスポートの申請の代理は法定代理人に限られる
- 親が子どもの予防接種の履歴を見るには、マイナポータルで代理人設定を行う。子どもと親の双方がマイナンバーカードを持っている必要がある
- 解除について、操作マニュアルの全体概要では、委任した人は代理人を解除でき、代理人も代理関係を解除できるとされている
- 一方、よくある質問では、DV の加害者が代理人に設定されている場合の案内として、解除の手続きは委任した人だけが行えるとされている
ここから読み取れるのは、国の仕組みでも「代理できる範囲」と「期間」を明示して設定し、手続きによっては法定代理人に限るという考え方がとられていることです。自治体の子育て手続きでも、同じ観点で、手続きごとの可否を決める必要があります。
子どものマイナンバーカードについては、マイナンバーカード総合サイトに次の記載があります。
- 15 歳未満の人と成年被後見人は、法定代理人による代理の申請が必要。15 歳以上 18 歳未満の人は、成年者と同様の方法で申請・受取ができる
- 15 歳未満の人には、原則として、署名用電子証明書をマイナンバーカードに付けることができない
子ども本人がマイナンバーカードで手続きを行える範囲は、年齢によって変わります。そのため、子育て手続きの多くは、保護者の本人確認と、保護者と子どもの関係の確認の組み合わせで設計することになります。
自治体が設計で決める 7 つのこと
親子アカウントの紐付けは、次の流れで考えると整理しやすくなります。国の資料には、自治体の独自のサービスに直接当てはまる基準は見当たらないため、以下の表は本記事による整理です。
表は横にスクロールできます
| # | 決めること | 選択肢の例 | 仕様書・運用に書くこと |
|---|---|---|---|
| 1 | 保護者の本人確認 | マイナンバーカードによる本人確認(公的個人認証)/窓口での対面確認/メールや LINE での登録のみ | 紐付けを行う前に求める本人確認の水準 |
| 2 | 親子関係の確認方法 | 窓口で書類を確認する/住民記録と照合する/申請時の申告と、後からの職員確認を組み合わせる | 確認に使う情報と、確認できない場合の扱い |
| 3 | 紐付けできる範囲 | 1 人の子どもに保護者 1 人/父母それぞれが紐付ける/同居していない保護者の扱い | 紐付けできる人数と条件。別の保護者が紐付けたときの通知の有無 |
| 4 | 保護者が代わりにできること | 閲覧だけ/申請まで/受け取りまで | 手続きごとの可否(根拠法令の申請者・名宛人に合わせる) |
| 5 | 子ども本人の関与 | 一定の年齢から本人の同意を求める/本人が自分のアカウントに切り替える | 年齢の考え方と、本人に知らせる内容 |
| 6 | DV 等支援措置の対象者への配慮 | 紐付けの申請を職員確認にする/住所などの表示を制限する | 住民記録担当との連携の手順 |
| 7 | 解除 | 子どもの成年/親権の変更/転出/保護者の退会 | 解除の条件、誰が解除できるか、反映の時期 |
特に判断が分かれる 4 点を、順に見ます。
親子関係の確認方法
こども家庭庁の市町村向けの通知(令和6年9月30日)では、児童手当の別居監護の確認などで、児童の住民票の写しまたは住民票記載事項証明書(児童が世帯主でない場合は、世帯主との続柄が記載されたもの)と、別居監護申立書を用いて確認するとされています。このように、手続きごとに、確認に使う書類と方法が定められています。
一方で、住民票の世帯や続柄は、親権者であることそのものを示すものではありません。親子アカウントの紐付けに住民記録を使う場合は、どの手続きの、どの確認の代わりとして使うのかを決め、親権者であることの確認が必要な手続きでは、別の確認を組み合わせます。
紐付けできる範囲と、父母の関係
民法等の改正(令和6年法律第33号)は、令和8年4月1日に施行され、離婚後に父母の双方を親権者とすることも、一方を親権者とすることもできるようになりました。法務省の行政手続き・支援に関する解説資料では、次のように整理されています。
- 行政手続きを子ども本人に対して行うか、保護者等に対して行うかは、手続きの根拠法令等で定まる
- 申請書等への父母の一方の署名押印をもって、他方の黙示的な同意を推定することは、規定の趣旨に反しない
- 保育所の「保護者」は、子ども・子育て支援法で「親権を行う者、未成年後見人その他の者で、子どもを現に監護する者」とされ、共同親権のもとでも、実態を踏まえる現行の取扱いに影響しない
システムでは、父母がそれぞれ子どもを紐付けられるようにするか、紐付けたことをもう一方の保護者に知らせるかなどを、手続きの性質に合わせて決めます。総務省の通知(令和7年10月1日)は、未成年の子の転入・転出などの届出について、市区町村は届出者の代理権等を確認して処理しており、父母双方の同意は求めていないと述べています。
子ども本人の関与
個人情報保護委員会のガイドラインの Q&A(民間事業者向け)は、法定代理人等から同意を得る必要がある子どもの年齢は、対象となる個人情報の項目や事業の性質等によって個別具体的に判断されるべきとしたうえで、一般的には 12 歳から 15 歳までの年齢以下の子どもについて、法定代理人等から同意を得る必要があると考えられるとしています。
また、個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律(令和8年法律第56号、令和8年7月17日公布)では、16 歳未満の人の個人情報の取扱いについて、同意の取得や通知などの相手を法定代理人とする方向の改正が行われ、個人情報保護委員会の資料では、行政機関等についても同様の改正を行うとされています。施行日と細目は政令・規則で定められるため、設計の時点で最新の内容を確認してください。
子どもが成長すると、保護者が見られる情報と、子ども本人が管理する情報を分けたほうがよい場面が出てきます。何歳から、何について本人に知らせ、本人の同意を求めるかを、扱う情報ごとに決めておきます。
DV 等支援措置の対象者への配慮
総務省は、DV、ストーカー行為等、児童虐待などの被害者が申し出て、支援の必要性が確認された場合に、加害者からの住民票の写し等の交付などの請求を制限する措置(DV 等支援措置)を設けています。総務省の通知(令和7年10月1日)は、離婚後に父母の双方が親権者である場合でも、DV を受けた親と子どもが同じ住所に避難し、もう一方の親が住所を探す目的で子どもの住民票の写しの交付を求めるおそれがあるときは、子どもについても支援措置を実施できるとしています。
この措置は、住民票の写し等の交付・閲覧の制限であり、オンライン申請システムでの表示までを定めたものではありません。親子アカウントの紐付けで、子どもの住所や利用している施設が保護者の画面に表示される場合は、支援措置の対象者について、紐付けの申請を職員の確認に回す、表示を制限するなどの手順を、住民記録の担当と決めておく必要があります。
解除の条件を、最初に決めておく
法務省によると、民法の成年年齢は令和4年4月1日から 18 歳になり、成年年齢は「親権に服することがなくなる年齢」という意味を持ちます。ただし、本記事で確認した資料の範囲では、子どもが成年になったときに、オンラインサービスの代理の設定が自動的に終わることを定めた国の資料は見当たりませんでした。民法上の親権が終わることと、システム上の紐付けが終わることは、別に設計する必要があります。
解除の条件は、紐付けを始める時点で決めておきます。
- 子どもの成年 — 18 歳になった時点で解除するか、本人のアカウントへの切り替えを案内するか
- 親権・監護の変更 — 職員が解除できるようにするか、保護者からの届出で解除するか
- 転出・死亡 — 住民記録の異動をどの間隔で反映するか
- 保護者の退会 — 紐付けている子どもの情報をどう扱うか
調達の全体像は、「自治体の認証基盤 調達チェックリスト」にまとめています。同意の記録、操作ログ、契約終了時の扱いなど、本記事で扱わなかった観点はそちらを参照してください。住民向けの ID 連携の考え方は、「自治体の OpenID Connect による SSO 入門」で、子どもの証の扱いは「デジタル市民証とは」で整理しています。
RinX の場合
当社の自治体向け統合 ID 基盤 RinX(リンクス)は、保護者のアカウントとお子さまのアカウントの紐付けに対応しています。サービスページで公開している内容は次のとおりです。
- お子さまのアカウントの紐付け — 保護者のアカウントにお子さまを紐付け、子ども向けのサービスも保護者がまとめて利用できます。サービスの連携・解除にも対応しています
- 本人確認の手段 — マイナンバーカードによる本人確認(公的個人認証)、LINE、メールアドレスのログインに対応しています。利用する手段は、自治体ごとにご相談のうえ決定します
- 同意の管理 — 個人情報の利用目的に対する同意を管理できます
- 連携 — OpenID Connect によるシングルサインオンに対応しています
上の 7 点に沿った個別の要件(親子関係の確認の方法、紐付けできる範囲、解除の条件など)は、お問い合わせの際にご相談ください。RinX に関する記事は、RinX の記事一覧にまとめています。
まとめ
- 親子アカウントの紐付けでは、「本人か」「この子どもの保護者か」「この手続きを代わりに行ってよいか」の 3 つを分けて確かめる
- 行政手続きを子ども本人と保護者のどちらに行うかは、手続きの根拠法令等で定まる。紐付けの権限も、手続きごとに決める
- 住民票の世帯や続柄は確認の材料になるが、それだけで親権者であることの証明にはならない
- 子ども本人の同意の年齢は、扱う情報ごとに決める。令和8年の個人情報保護法の改正の施行日と細目は、設計の時点で確認する
- DV 等支援措置の対象者への配慮と、成年・親権の変更などによる解除の条件を、紐付けを始める前に決めておく
RinX の機能・導入の流れ・費用の考え方は、サービスページで確認できます。
よくある質問
Q1. 親子アカウントの紐付けとは何ですか?
住民向けのオンラインサービスで、保護者のアカウントに子どもを結び付け、子どもに関する手続きや情報の確認を保護者が行えるようにする仕組みです。どの手続きを保護者が代わりに行えるか、どのように親子関係を確認するかは、サービスを提供する自治体が決めます。
Q2. 同じ世帯にいれば、親子として紐付けてよいですか?
住民票の世帯や続柄は確認の材料になりますが、それだけで親権者であることの証明にはなりません。こども家庭庁の通知では、児童手当の確認に、続柄が記載された住民票の写しなどと申立書を用いるとされており、手続きごとに確認の方法が定められています。紐付けに住民記録を使う場合は、どの確認の代わりとして使うのかを決めておく必要があります。
Q3. 父母の両方が紐付けることはできますか?
システムとしては、どちらの設計も可能です。法務省の解説資料は、行政手続きを誰に対して行うかは根拠法令等で定まるとし、父母の一方の署名押印で他方の黙示的な同意を推定することは趣旨に反しないとしています。紐付けできる人数や、もう一方の保護者に知らせるかは、手続きの性質に合わせて自治体が決めます。
Q4. 子ども本人の同意は、何歳から必要ですか?
個人情報保護委員会の Q&A(民間事業者向け)は、扱う情報や事業の性質により個別に判断されるとしたうえで、一般的には 12 歳から 15 歳までの年齢以下の子どもについて、法定代理人等の同意が必要と考えられるとしています。令和8年の改正法では 16 歳未満を対象とする方向の改正が行われていますが、施行日と細目は政令・規則で定められるため、設計の時点で確認してください。
Q5. DV などで避難している家庭には、どう配慮しますか?
総務省の DV 等支援措置は、住民票の写し等の交付・閲覧を制限する制度で、オンライン申請システムでの表示までは定めていません。支援措置の対象者について、紐付けの申請を職員の確認に回す、住所などの表示を制限するなどの手順を、住民記録の担当と決めておく必要があります。
Q6. 子どもが 18 歳になったら、紐付けはどうなりますか?
民法の成年年齢は 18 歳で、成年になると親権に服さなくなります。ただし、オンラインサービスの紐付けが自動的に終わることを定めた国の資料は、本記事で確認した範囲では見当たりませんでした。18 歳で解除するか、本人のアカウントへの切り替えを案内するかを、提供する自治体が決めておく必要があります。
Q7. RinX では、親子アカウントの紐付けを使えますか?
サービスページでは、保護者のアカウントにお子さまを紐付け、子ども向けのサービスも保護者がまとめて利用できることを公開しています。親子関係の確認の方法や、紐付けできる範囲、解除の条件などの個別の要件は、お問い合わせの際にご相談ください。
出典・参考資料
いずれも2026年10月30日に内容を確認しています。
- デジタル庁『自治体での子育て・介護関係の26手続のオンライン化取組状況』説明ページ(最終更新 2025年11月21日)digital.go.jp
- デジタル庁『マイナポータル操作マニュアル 代理人/全体概要』img.myna.go.jp
- マイナポータル よくあるご質問『代理人は誰でもなることが出来ますか。』faq.myna.go.jp
- マイナポータル よくあるご質問『親が子供の代理人になって予防接種の履歴などが見れますでしょうか?』faq.myna.go.jp
- マイナポータル よくあるご質問(DV 加害者に情報を閲覧されないようにする方法)faq.myna.go.jp
- マイナンバーカード総合サイト『子供でもマイナンバーカードの申請はできますか?』kojinbango-card.go.jp
- マイナンバーカード総合サイト『電子証明書とは何ですか?』kojinbango-card.go.jp
- こども家庭庁成育局長『市町村における児童手当関係事務処理について』(こ成環第264号、令和6年9月30日)cfa.go.jp
- 法務省『Q&A形式の解説資料(行政手続・支援編)』moj.go.jp
- 法務省『民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後の子の養育に関する見直し)について』moj.go.jp
- 法務省『成年年齢引下げ』moj.go.jp
- 個人情報保護委員会『「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A』Q1-62ppc.go.jp
- 個人情報保護委員会『令和8年 改正個人情報保護法について』ppc.go.jp
- 個人情報保護委員会事務局『個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律 政令・規則の整備に向けた基本的な考え方について①』(令和8年9月16日)ppc.go.jp
- 総務省『DV、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の方は、申出によって、住民票の写し等の交付等を制限できます。』soumu.go.jp
- 総務省自治行政局住民制度課長『父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法による住民基本台帳事務への影響に関する質疑応答について』(総行住第124号、令和7年10月1日)soumu.go.jp
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