本記事は、2026年10月29日時点で公開されている資料をもとにした一般的な観点の整理です。個別の設計や調達の判断は、各自治体の所管部門と、システムを提供する事業者、必要に応じて専門家に確認してください。引用した資料は改訂が続くため、実際の作業の時点で最新の内容を確認してください。

「デジタル市民証」という言葉の 3 つの使われ方

同じ言葉や似た言葉が、次の 3 つの意味で使われています。打合せや仕様書で混ざると、求める要件が食い違うため、最初に区別します。

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区分指すもの提供する主体本記事での扱い
① 自治体が独自に提供する券スマートフォンに発行する、その自治体の住民であることなどを示す証。施設の住民向けの料金や、図書館の利用に使う例がある自治体、または委託を受けた事業者「デジタル市民証」と呼び、主な対象とする
② 国の「市民カード化」(行政カード化)マイナンバーカードを、図書館カードなどの各種のカードとして使う構想カードは市区町村が本人確認のうえ交付。構想はデジタル庁が推進デジタル市民証とは別のもの。国の資料として参照
③ スマートフォンのマイナンバーカードマイナンバーカードの機能を、iPhone・Android 端末に追加して使うサービスデジタル庁デジタル市民証とは別のもの。比較のために参照

なお、総務省の情報サイトには「デジタル・シティズンシップ」という語がありますが、これは「デジタル技術の利用を通じて、社会に積極的に関与し、参加する能力」を指す教育の用語で、証やカードとは関係がありません。

何であり、何でないか|マイナンバーカードとの違い

マイナンバーカードの機能をスマートフォンに搭載したものがスマートフォンのマイナンバーカードで、自治体が定める券であるデジタル市民証とは別のものであることを示す図
スマートフォンのマイナンバーカードは、マイナンバーカードの機能をスマートフォンに搭載したもの。デジタル市民証は、自治体が定める別の券

整理すると、次のようになります。

  • マイナンバーカードは、国の仕組みに基づくカードです — 総務省の資料は、カードを「本人の申請に基づき、市区町村長が厳格な本人確認を行った上で交付」するものとし、おもて面は身分証明書として利用できると説明しています
  • スマートフォンのマイナンバーカードは、その機能の追加です — デジタル庁の案内では、実物のマイナンバーカードを使ってマイナアプリで追加します。マイナ免許証としては使えず、実物のカードも必ず持参するよう案内されています
  • デジタル市民証は、自治体が定める券です — 何を証明するか、どの本人確認で発行するか、どこで使えるかは、提供する自治体や事業者が決めます。本記事で確認した資料の範囲では、法令上の位置づけを確認できませんでした。公的な本人確認書類と同じように使えるかは、提供元の定めで確認する必要があります

自治体が国のカードの仕組みを使うこともできます。総務省の資料では、市町村・都道府県等は、条例で定めるところにより、マイナンバーカードの IC チップの空き領域を利用できるとされ、印鑑登録証が例に挙がっています。これは、国のカードを自治体のサービスに使う方法であり、独自の券を発行する方法とは別の選択肢です。

国の資料で見る|市民カード化から行政カード化へ

デジタル庁は、自治体向けの資料「マイナンバーカードの市民カード化構想を進めるために」(令和7年3月、v1.10)を公開していました。令和8年7月(v2.0)の版は、題名が「マイナンバーカードの行政カード化構想を進めるために」に変わっています。令和8年7月版は、行政カード化を「マイナンバーカードを各種の資格証等として利用でき、新たなサービスやメリットを受けられる」ものと説明しています。

同じ資料に、自治体のカードの利活用状況があります。デジタル庁の調査では、令和7年10月1日時点で、871 の自治体が、マイナンバーカードを活用した独自のサービスを合計 1,534 件提供しています(書かない窓口、図書館カード、印鑑登録証、医療・健康・子育てサービスなど。オンライン申請とコンビニ交付を除く)。図書館カードは、その代表的な利用場面の 1 つです。

スマートフォンのマイナンバーカードについては、デジタル庁の案内(最終更新 2026年10月20日)に、次の記載があります。

  • Android 端末で 2023年5月に提供を開始し、iPhone では 2025年6月24日に提供を開始した。2026年10月20日からは「Android のマイナンバーカード」の提供を開始した
  • 暗証番号の入力の代わりに、顔や指紋などの生体認証を使える
  • マイナポータル、コンビニでの証明書の取得、医療機関や薬局での受付、e-Tax などで使える。場所やサービスは拡大中で、OS により使える場所が異なる場合がある
  • スマートフォンを手放す・機種変更する前に、スマートフォンからマイナンバーカードを削除する。実物のカードと電子証明書を更新したときは、スマートフォン側も設定し直す

マイナアプリ統合の経緯と、自治体の本人確認への影響は、「マイナアプリ統合で、自治体の本人確認はどう変わるか」で整理しています。

自治体が設計で決める 8 つのこと

デジタル市民証を設計するときは、次の 8 点を決めます。国の資料には、独自の券に直接当てはまる基準は見当たらないため、表は本記事による整理です。

デジタル市民証の発行、表示、確認、更新・失効の 4 つの段階と、それぞれの段階で決めること(本人確認の水準、表示する情報、窓口での確認方法、退会・機種変更)を示す図
デジタル市民証の流れと、段階ごとに決めること(8 点のうち、代表的なもの)

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#決めること選択肢の例仕様書・運用に書くこと
1発行時の本人確認の水準マイナンバーカードによる本人確認(公的個人認証)/窓口での対面確認/メールや LINE での登録のみどの水準で発行した証で、何ができるか(割引だけか、貸出まで使えるか)
2表示する情報住民であることだけ/氏名、生年月日、利用者番号を含める表示項目を必要最小限にする理由。画面を見られる、写される前提での考え方
3使う場面図書館の貸出券、施設の住民向けの料金、子育て関連のサービス場面ごとに必要な確かさ(次節の表)
4窓口での確認方法職員が画面を目で見る/2 次元コードを端末で読み取る/システムで有効性を確認する職員の手順、用意する端末、確認の記録の残し方
5不正・画面の写し対策動く表示や時刻の表示/読み取りごとに変わるコード/サーバーでの有効性の確認場面の価値に見合う強さ。破られたときの対応
6既存の番号・家族との関係既存の利用者番号と紐付ける/子どもの証を保護者のアカウントに紐付ける紐付けの手順と、保護者の権限が終わるときの扱い
7通信できない場所での扱い通信を前提にする/通信できなくても確認できる方式を併用する失効の反映が遅れる可能性と、代替の手段
8退会・失効・機種変更退会で失効/住民でなくなったときに失効/機種変更時に移行する失効の条件と反映の時期、再発行の手順

特に判断が分かれる 5 点を、順に見ます。

発行時の本人確認の水準

証を発行する時点の本人確認が弱ければ、証を見せる側がどれだけ厳格に確認しても、確かさは上がりません。国のマイナンバーカードは、市区町村長が本人確認をしたうえで交付されます。独自の券では、発行の本人確認を、マイナンバーカードによる本人確認(公的個人認証)にするのか、より簡易な方法にするのかを決め、その水準に見合った場面にだけ使うようにします。デジタル庁・総務省の「公的個人認証サービス利用のための民間事業者向けガイドライン」(第 1.8 版、令和8年4月改正)は、スマートフォンに搭載された電子証明書についても、マイナンバーカードに係る電子証明書と同等に、最高レベルの本人確認を実現していると説明しています。

窓口での確認方法

確認の方法は、職員が画面を目で見る方法から、端末で読み取って有効性を確かめる方法まで幅があります。参考になるのが、国の「マイナンバーカード対面確認アプリ」です。事業者や自治体のスタッフが、住民のマイナンバーカードやスマートフォンのマイナンバーカードを、スタッフのスマートフォンで読み取って確認します。同アプリの案内には、次の記載があります。

  • スマートフォンのマイナンバーカードは、インターネットに接続できない場所では確認できない(実物のカードは確認できる)
  • 確認結果は PDF で出力でき、出力した PDF が改ざんされていないかをアプリで検証できる
  • Android の「機能限定版」は確認できない

独自の券でも、同じ観点で、確認の手順・用意する端末・確認の記録・端末の対応範囲を決めておく必要があります。

不正・画面の写し対策

画面に表示する証は、静止画(スクリーンショットや写真)で複製される可能性があります。公的な基準は見当たらないため、以下は設計の選択肢の例です。

  • 動く表示や時刻の表示 — 画面に動く要素や現在時刻を出し、静止画の使い回しを職員が見分けやすくします
  • 読み取りごとに変わるコード — 一度きり、または短い時間だけ有効なコードにし、写されても後で使えないようにします
  • サーバーでの有効性の確認 — 目で見るだけでなく、確認の時点で、証が有効かをシステムに照会します

どこまで備えるかは、証で受けられるサービスの価値に見合う強さで決めます。割引券と、貸出や子ども向けの手続とでは、不正があったときの影響が異なります。

既存の番号・家族との関係

図書館などで、すでに利用者番号を使っている場合は、証に載せる番号や識別子と、既存のシステムの利用者番号をどう対応させるかを決めます。子どもについては、子ども自身の証を発行するのか、保護者のアカウントに紐付けるのかを決め、保護者の権限が終わる時点(子どもが成人するときなど)の扱いも定めておきます。住民向けの ID 連携の考え方は、「自治体の OpenID Connect による SSO 入門」にまとめています。

退会・失効・機種変更

総務省の資料(令和5年3月)では、マイナンバーカードの電子証明書は有効期間が満了する日まで使えるものとして、カードそのものは海外への転出や死亡などで失効するものとして、分けて示されています。同じ資料は、空き領域を使う民間事業者向けの説明として、カードの紛失・盗難の失効情報が事業者の業務システムへ連携される際の更新は 1 日 1 回であり、急ぎで停止するときは業務システム側で直接止める必要があると述べています。失効は、起きた時点と窓口に反映される時点にずれが生じるため、独自の券でも、どの時点で失効させるか、反映をどのくらいの間隔で行うか、急ぎの停止をどう行うかを決めます。機種変更については、スマートフォンのマイナンバーカードでは、手放す前にスマートフォンから削除するよう案内されています。独自の券でも、旧端末の証を無効にし、新しい端末へ移す手順を、住民向けの案内に含めておく必要があります。

使う場面ごとに、必要な確かさを分ける

同じ証でも、場面によって、守るものと、必要な確かさが異なります。次の表は、考え方の例(本記事の整理)です。

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場面守るもの必要な確かさの考え方確認の方法の例
図書館の貸出券貸出の履歴、資料図書館システムの利用者番号と結び付く。本人以外の利用を防ぐ窓口の端末で読み取り、システムで利用者を照会
施設の住民向けの料金料金の差住民であることが、最新の状態で反映されている2 次元コードを読み取り、住民資格を照会
子育て関連のサービス子どもの情報保護者との結び付きと、保護者の権限の確認保護者の本人確認と、紐付けの照会

調達の全体像は、「自治体の認証基盤 調達チェックリスト」にまとめています。同意の記録、操作ログ、契約終了時の扱いなど、本記事で扱わなかった観点はそちらを参照してください。

RinX の場合

当社の自治体向け統合 ID 基盤 RinX(リンクス)には、スマートフォンに表示するデジタル市民証があります。サービスページで公開している内容は次のとおりです。

  • デジタル市民証 — スマートフォンに表示します。活用例として、図書館の貸出券としても利用できます。月額利用料には、認証基盤・マイページ・デジタル市民証の利用料が含まれます
  • 本人確認の手段 — マイナンバーカードによる本人確認(公的個人認証)、LINE、メールアドレスのログインに対応しています。利用する手段は、自治体ごとにご相談のうえ決定します
  • 住民の利用環境 — マイページは Web ブラウザで利用でき、RinX 専用アプリは不要です
  • 家族・同意・連携 — お子さまのアカウントの紐付け、個人情報の利用目的に対する同意の管理、OpenID Connect によるシングルサインオンに対応しています
  • 既存の利用者情報 — 既存の利用者データを取り込めるため、これまでの利用者情報を引き継げます

上の 8 点に沿った個別の要件(表示する情報、窓口での確認の方法、失効の扱いなど)は、お問い合わせの際にご相談ください。RinX に関する記事は、RinX の記事一覧にまとめています。

まとめ

  1. デジタル市民証は、国の制度名ではなく、自治体や事業者が独自に提供する、スマートフォンに表示する証を指す言葉として使われている。本記事で確認した資料の範囲では、国による定義と法令上の位置づけは確認できなかった
  2. マイナンバーカード、スマートフォンのマイナンバーカード、国の市民カード化(令和8年7月版の資料では行政カード化)とは別のもので、仕様書では区別して書く
  3. 決めることは、発行時の本人確認の水準、表示する情報、使う場面、窓口での確認方法、不正・画面の写し対策、既存の番号・家族との関係、通信できない場所での扱い、退会・失効・機種変更の 8 点
  4. 場面ごとに必要な確かさを分け、確かさの低い発行方法で受けた証を、確かさが必要な場面に使わない
  5. 国の資料は参考にとどめ、独自の券の基準は自治体が自ら定める。引用する資料は版と確認日を書く

RinX の機能・導入の流れ・費用の考え方は、サービスページで確認できます。

よくある質問

Q1. デジタル市民証とは何ですか?

一般に、自治体の住民であることなどを、スマートフォンの画面で示すための証を指す言葉です。図書館の貸出券や施設の住民向けの料金などに使う例があります。国が定めた共通の定義は、本記事で確認した資料の範囲では見当たらず、提供する自治体や事業者によって、証明する内容や使える場面が異なります。

Q2. デジタル市民証は、公的な本人確認書類として使えますか?

法令上の位置づけは、本記事で確認した資料の範囲では確認できませんでした。マイナンバーカードは、市区町村長が本人確認をしたうえで交付され、おもて面は身分証明書として利用できると総務省の資料に示されています。独自の券を同じように扱えるかどうかは、提供する自治体や事業者の定めで確認する必要があります。

Q3. スマートフォンのマイナンバーカードとは何が違いますか?

スマートフォンのマイナンバーカードは、実物のマイナンバーカードの機能を、マイナアプリで iPhone や Android 端末に追加するデジタル庁のサービスです。デジタル市民証は、自治体や事業者が定める別の券で、発行の方法も、使える場面も、提供元が決めます。

Q4. 画面を写した画像で、悪用されませんか?

静止画で複製される可能性は、画面に表示する方式の課題です。動く表示や時刻の表示、読み取りごとに変わるコード、確認の時点でのサーバーへの照会などの選択肢があります。公的な基準は確認できなかったため、証で受けられるサービスの価値に見合う強さを、自治体が決めます。

Q5. スマートフォンを持たない住民には、どう対応しますか?

スマートフォンを使えない住民に、同じサービスを別の方法(窓口での受付や、既存のカードの継続など)で提供できるようにしておく必要があります。どの方法を残すかは、使う場面ごとに、自治体が決めます。

Q6. 機種変更や退会のときは、どうなりますか?

スマートフォンのマイナンバーカードでは、手放す・機種変更する前に、スマートフォンから削除するよう、デジタル庁が案内しています。独自の券では、旧端末の証を無効にして新しい端末へ移す手順や、退会時に失効させる時期を、提供元が定めます。住民向けの案内に含めておくことが必要です。

Q7. RinX では、デジタル市民証を使えますか?

サービスページでは、スマートフォンに表示するデジタル市民証を公開しています。活用例として、図書館の貸出券としても利用できます。月額利用料には、認証基盤・マイページ・デジタル市民証の利用料が含まれます。表示する情報や確認の方法などの個別の要件は、お問い合わせの際にご相談ください。

出典・参考資料

いずれも2026年10月29日に内容を確認しています。

  1. デジタル庁『自治体向けマイナンバーカード活用情報』(最終更新 2026年9月25日)digital.go.jp
  2. デジタル庁『【資料3】自治体の皆様へ ~マイナンバーカードの行政カード化構想を進めるために ご参考資料』(令和8年7月、v2.0)digital.go.jp
  3. デジタル庁『自治体の皆様へ ~マイナンバーカードの市民カード化構想を進めるために ご参考資料』(令和7年3月、v1.10)digital.go.jp
  4. デジタル庁『スマートフォンのマイナンバーカード』(最終更新 2026年10月20日)digital.go.jp
  5. デジタル庁『マイナンバーカード対面確認アプリ』services.digital.go.jp
  6. 総務省自治行政局住民制度課『民間事業者によるマイナンバーカードの空き領域の活用について』(令和5年3月)soumu.go.jp
  7. デジタル庁・総務省『公的個人認証サービス利用のための民間事業者向けガイドライン -第1.8版-』(平成27年9月、令和8年4月改正)soumu.go.jp
  8. 総務省『知っておきたい16のキーワード:デジタル・シティズンシップ』(ICT活用リテラシー向上プロジェクト)soumu.go.jp

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